ボールを投げ始めは痛みがあるが、投げているうちに痛みがなくなるのは大丈夫?それ、ちょっと待った!

危険信号を見逃してない?ボールを投げ始めの痛みと体の不思議な関係
野球やソフトボール、その他ボールを投げるスポーツをしている皆さん、こんな経験ありませんか?
「投げ始めは肩や肘がちょっと痛いけど、何球か投げているうちに痛みがなくなって、その後は普通に投げられるから大丈夫!」
これ、多くの人が「よしよし、体が温まってきてほぐれたんだな!」と思いがちですよね。実際、私も昔はそう思っていましたし、周りにもそういう人がたくさんいました。でも、本当にそうでしょうか?その「大丈夫」の裏に、実は大きな落とし穴が隠れているとしたら……?
その「大丈夫」、本当に大丈夫?
考えてみてください。もしあなたの車のエンジンから、最初は変な音がするのに、しばらく走っていたら音がしなくなったとします。あなたは「やった!直った!」と思いますか?それとも「もしかして、もっと悪いことになってるんじゃ…?」と心配になりませんか?
体も同じです。痛みが一時的に消えるのは、体が痛みを「感じなくしている」だけで、問題そのものが解決したわけではない可能性が高いんです。むしろ、危険信号を見落としているかもしれません。
体が痛みを「感じなくする」メカニズム
では、なぜ痛みを感じなくなるのでしょう?これには、私たちの体に備わる自律神経が深く関わっています。自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があります。
ボールを投げ始めの痛みは、炎症や組織の損傷など、体に何らかの異常があるサインです。体が「やばいぞ!」と警告を発している状態ですね。しかし、投げ続けているうちに、体は「このままでは投げられない、でも投げなければならない」という状況に直面します。すると、交感神経が優位になり、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、一時的に痛みの感覚を麻痺させることがあるんです。
これは、体が「緊急事態モード」に入り、目の前のタスク(ボールを投げること)を遂行するために、痛みを一時的にシャットアウトしているような状態です。例えるなら、火災報知器が鳴っているのに、音がうるさいからといって電池を抜いてしまうようなもの。火事は消えていませんよね?
「今は大丈夫」が「将来大丈夫じゃない」に繋がるかも
一時的に痛みが消えることで「治った」と錯覚し、そのまま練習や試合を続けてしまうと、どうなるでしょうか。体への負担は蓄積され、気づかないうちに小さな損傷が大きな怪我へと発展してしまう可能性があります。
例えば、肩の腱に小さな炎症があったとして、痛みが引いたからと無理に投げ続けると、その炎症が悪化して断裂に繋がってしまうことだってあります。肘の成長軟骨に負担がかかっていたとして、痛みが消えるからと投げ続けると、将来的に骨の変形や遊離体(関節ねずみ)の原因になることも。
あなたの体は、本当に「大丈夫」だと訴えていますか?
投げ始めに痛みを感じるということは、あなたの体があなたに「ちょっと待って!無理しないで!」とサインを送っている証拠です。そのサインを見逃さず、立ち止まって体の声に耳を傾けることが、長く健康にスポーツを続けるためには不可欠です。
もし投げ始めに痛みを感じたら、まずは無理をせず、痛みの原因を探ってみることをおすすめします。そして、痛みが引いても、それが本当に「治った」のか、それとも体が一時的に痛みを麻痺させているだけなのか、見極めることが大切です。
あなたの体は、大切な資本です。その資本を長く、健康に保つために、今日の「大丈夫」が明日の「大丈夫じゃない」にならないよう、賢くケアしていきましょう。