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「電気なんてどこも一緒」と思っていませんか? 物理療法の効果を10倍にする「狙い撃ち」の技術

1. 導入:その電気治療、本当に「患部」に届いていますか?

整骨院や整形外科で、「とりあえず電気を流しておきましょう」と言われ、なんとなくビリビリする治療を受けた経験はありませんか? そして、「これって本当に効いているのかな?」と疑問に思ったことはないでしょうか。

正直に申し上げます。 すべての怪我に、ただ電気を当てればいいわけではありません。

怪我には「時期(急性期・回復期)」や「損傷の度合い」があります。 炎症が強い時期には炎症を抑える治療を、組織が固まっている時期には緩める治療を選択しなければなりません。 その時々の状態に合わせた最適な物理療法を選択することこそが、怪我の回復を劇的に早める1つの方法なのです。

湘南台のアスリートケア整骨院が、プロアスリートからも選ばれる理由。 それは、最新の物理療法機器を揃えているからだけではありません。 エコー検査で損傷箇所や状態をミリ単位で特定し、そこにピンポイントで照射する**「狙い撃ち」の技術**があるからです。

今回は、当院が誇る物理療法機器と、その効果を最大化するこだわりについてお話しします。

2. なぜ「エコー × 物理療法」なのか?

「高性能な治療器」は、あくまで道具です。使い手が的確でなければ意味がありません。

例えば、フェラーリのようなスーパーカーを想像してみてください。 フェラーリの真価は、サーキットなどで時速数百キロを出して走ることで初めて発揮されます。渋滞した道を時速20キロで走っていては、その圧倒的なポテンシャルは全く引き出せません。

物理療法も、これと同じことが言えます。 どんなに高価で高性能な治療器(立体動態波など)を持っていても、当てる場所や深さ、設定が的確でなければ、その性能は全く発揮されないのです。

例えば、太ももの肉離れ。 表面から見て「この辺が痛い」といって電気パッドを貼っても、実際の断裂部位が皮膚から3cm奥の深層にあった場合、普通の電気治療では届きません。フェラーリで渋滞を走っているようなものです。

当院では、まず**エコー(超音波画像診断装置)**で体内を可視化します。

  • 「損傷部位はどこか?(位置)」

  • 「皮膚から何cmの深さか?(深度)」

  • 「炎症期か、修復期か?(タイミング)」

これらを正確に把握した上で、最適な周波数と出力を設定し、患部を狙い撃ちします。 だからこそ、1回の治療での変化が違うのです。

3. アスリートを支える「4つの武器」

当院では、症状や回復フェーズに合わせて、プロスポーツ現場でも使用される4種類の機器を使い分けています。

① 立体動態波(深部まで届く3Dの刺激)

従来の電気治療(低周波)は皮膚表面への刺激が主でしたが、これは3つの高い周波数を体内で干渉させ、深層の筋肉や関節まで電気を到達させます。 「奥の方で凝り固まっている痛み」や「関節の可動域改善」に即効性があります。

② 超音波治療器(ミクロのマッサージ)

1秒間に数百万回という高速振動を体に与えます。 手技では届かない体の深部に対して、温熱効果(温める)と非温熱効果(細胞の活性化)を与え、硬くなった組織を柔らかくします。肉離れ後のしこり(瘢痕組織)の除去などにも必須です。

③ オステオトロン(骨折治療器)

「骨折は固定して待つしかない」と思っていませんか? この機器が出す「LIPUS(低出力パルス超音波)」は、骨の形成を促進し、骨折の治癒期間を約40%短縮するというデータがあります。 一日でも早くフィールドに戻りたい選手にとって、強力な味方です。

④ AT-mini(微弱電流)

人間が怪我をした時に出す「損傷電流」に近い、ごく弱い電気を流します。 ビリビリ感は全くありませんが、細胞レベルでの修復を促進します。炎症が強い急性期や、試合後のコンディショニングに最適です。

4. 「道具」に使われるな。「道具」を使いこなせ。

良い道具があれば治るわけではありません。 私たち施術家が、解剖学(身体の構造)を熟知し、エコーで病態を把握し、その上で道具を使いこなすことで初めて、患者様の体は回復に向かいます。

「なかなか痛みが引かない」 「試合までに間に合わせたい」

その想いに応えるための準備は整っています。 ただの電気治療ではない、プロ仕様の「物理療法」をぜひ体感してください。

🏥 アスリートケア整骨院(湘南台)

スポーツ外傷・野球肘検診・エコー検査

「骨には異常なし」と言われたのに痛い…。なぜ当院は「エコー検査」にこだわるのか?

その痛み、「見えないまま」治療していませんか?

「病院でレントゲンを撮ったけど、骨には異常がないと言われた」 「湿布をもらったけど、痛みが引かない」 「いつから練習に復帰していいのか、はっきり分からない」

湘南台のアスリートケア整骨院には、こうした悩みを抱えたスポーツ選手や患者様が多く来院されます。

まず誤解のないようにお伝えしておくと、レントゲンは全体像を把握する検査として非常に有効です。骨折の有無や骨の変形を診断する上では、なくてはならない検査です。

しかし、レントゲンにも**「苦手なこと」**があります。 それは、微細な損傷や、筋肉・靭帯などの柔らかい組織(軟部組織)の状態を詳細に映し出すことです。

実際に当院の現場でも、「病院のレントゲンでは問題ないと言われたが、痛みが引かないので詳しく見てほしい」と来院され、エコーで精密に検査したところ、実は靭帯が断裂していたり、小さな剥離骨折が見つかったりするケースは数多くあります。

当院が初診時のカウンセリングと同じくらい**「エコー観察(超音波画像診断装置)」を重要視している理由。 それは、レントゲンで見逃されがちな「小さな損傷」まで可視化(見える化)しない限り、本当の原因と最短のゴールは見えない**と考えているからです。

2. ただのエコーではない。当院の「プローブ」へのこだわり

「エコーなんてどこで撮っても同じ」と思っていませんか? 実は、エコー検査の精度は、体に当てる部分である**「プローブ」の性能**によって全く見え方が変わります。

当院では、スポーツ外傷や日常のケガが最も起こりやすい**「表層から3〜5センチ」**の深さが、最も鮮明に見える高周波プローブを採用しています。

深い内臓を見るためのエコーと、浅い筋肉や靭帯を見るためのエコーは別物です。 当院のエコーは、筋肉の繊維一本一本や、靭帯のわずかなほころびまで鮮明に映し出すことができる、まさに**「運動器(筋肉・骨・関節)専用」の目**を持っています。

3. 可視化する3つのメリット

「なんとなく」ではなく「はっきりと」見ることで、治療には以下の3つの明確なメリットが生まれます。

① 治療の「現在地」と「ゴール」が決まる

損傷の程度が「グレード1(軽傷)」なのか「グレード3(重傷)」なのかを目で見て判断することで、「2週間で復帰できる」のか「1ヶ月は固定が必要」なのか、正確な計画が立てられます。 勘や経験則だけに頼らない、根拠のある治療計画こそが、早期復帰への最短ルートです。

② 最適な物理療法を選択できる

「痛めている場所」と「深さ」が正確に分かれば、当院にある**「立体動態波」「超音波治療器」「オステオトロン(骨折治療器)」**を、ピンポイントで患部に照射できます。 見当違いの場所に電気をあてるのと、可視化された患部を狙い撃ちするのとでは、回復スピードに雲泥の差が出ます。

③ 患者様自身が「納得」できる

画面を見ながら「ここが切れていますね」「ここが腫れていますね」と説明を受けると、患者様ご自身が自分の体の状態を深く理解できます。 「今は無理をしてはいけないんだな」「順調に治ってきているな」と納得することで、治療へのモチベーション(コンプライアンス)が高まり、結果として治癒が早まるのです。

4. アスリートケア整骨院のスタンス

私たちは、「心体義塾」の理論に基づき、**構造(解剖学)機能(呼吸・姿勢)**の両面から身体を見ています。

エコー検査は、そのうちの**「構造(どこが壊れているか)」を把握するための最強のツールです。 ここで「壊れている場所」を特定し、適切な処置をした上で、ZAT(ゼロ式姿勢調律法)による「機能(なぜ壊れたのか、どう動かせば再発しないか)」**のアプローチへと繋げていきます。

「見えない不安」を抱えたままにせず、まずは一度、ご自身の体の内側を「見て」みませんか?

🏥 アスリートケア整骨院(湘南台)

スポーツ外傷・野球肘検診・エコー検査

イップスになりまして【後編】

イップス体験記【前編】では、監督の「コンパクトに投げろ」という指導と、それを隠したまま投げた肩の痛み、そしてマウンド前でのワンバウンドという決定的な瞬間についてお話ししました。

あの日から、私の投球動作は完全に崩壊し、イップスという魔物に支配されることになります。

■ 脳に上書きされた「魔のフォーマット」

イップスになってしまった後は、本当に全くと言っていいほど投げ方がわからなくなったんです。

わからないし、投げるのが怖かったですね。

コーチには「前の投げ方に戻せばいいんだよ」って言われるんですが、それが、もう本当に難しいんですよね。

監督に言われた**「コンパクトに引いて投げる」という、痛みのある投げ方が、僕の脳の中で「正しい投球」として非常に強く上書き保存されてしまっていた**んです。(中略)

「前の投げ方」なんて、もうどこにも見つからなかった。 鏡を見ても、その場でいくら意識しても、体が勝手に間違った「魔のフォーマット」で動こうとするんです。

■ 克服できなかった、そして残った違和感

結局、高校時代はイップスを治すことはできませんでした。(中略)

高校を卒業して、しばらく経ってから、中学生に野球を教えているうちに、なんとなく投げられるようにはなりました。

ただ、その時の感覚はものすごく気持ち悪いですよ。

投げる動作自体はしているんですけど、自分の体じゃないみたいで、以前のような「スッと腕が出ていく感じ」が全くないんです。まるで、別の誰かに遠隔操作されているような、違和感だけが残りました。

■ 今、当時の自分に伝えたいこと

この「気持ち悪さ」は、今思えば、無意識下での体の使い方が、極度の緊張と恐怖によって崩壊したまま、完全に修復されていない状態だったのだと思います。

今、当時の自分に伝えたいことは山ほどありますが、一番は、**「休養」**です。

休養しないとダメですね。

当時の私は、イップスはフォームのメカニズムだけでなく、恐怖や睡眠不足、栄養など、色々な要因が混ざり合って症状を複雑にしてしまったのだと思います。

パフォーマンスを上げるために練習するんですけど、バグが起きている身体で練習をしても、バグが酷くなるだけです。(中略)

そして、当時の自分に今の知識があれば、こうも伝えます。

「力でごまかそうとするな。お前の体は『恐怖』で固まって、呼吸が止まっている。直すべきは、腕の振りじゃなく、お前の姿勢と呼吸の調律だ。」

イップスは、単なる気の持ちようではありません。それは、あなたの体というシステムが、極度のプレッシャーと誤った動作指令によって「バグを起こしている」状態なんです。


私自身のイップス体験を通して、私は**「心と体の調律」「適切な休養」**の重要性を痛感しました。

もし今、イップスに悩んでいる方がいれば、「メンタルが弱い」と自分を責めないでください。まずは、体の無意識の緊張を解き、しっかりと休むことから始める必要があります。

私の知見や、そのアプローチ方法(呼吸や姿勢の調律など)に興味を持っていただけたなら、ぜひこのブログの他の記事(オスグッド編など)も読んでみてください。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

イップスになりまして【前編】

これは、実際の私の体験談です。 イップスで悩んでいる子がいれば少しでも参考になればという思いと、誰でもイップスになる可能性は持っているということがわかってもらえれば幸いです。

今回、私が語るのは、スポーツを頑張る誰もが恐れる「魔物」イップスについてです。

「これまでできていたことが、ある日突然、自分の意思に反してできなくなる。」

膝の痛みとは違い、それはまるで脳が自分の体を乗っ取ったかのような、身も凍るような感覚です。多くの親御さんや選手が「メンタルが弱いからだ」と責めてしまう、あの深刻な悩みの正体。

実は、私自身、高校時代にこの魔物、イップスに完全に蝕まれました。

なぜ、力と根性で乗り越えてきたはずの私の体が、わずか数ヶ月で崩壊したのか?

今回は、その地獄のような体験のリアルと、魔物が生まれるまでのプロセスについて、ダラダラと、しかし情熱を持って語っていきたいと思います。


私は小学4年生から野球を始め、中学はリトルシニアで汗を流しました。

体は特別大きくはなかったですが、足もそこそこ、打つのもそこそこ、投げるのもそこそこ。どちらかというと、**「力でなんとかするタイプ」「気合いと根性でなんとかなる!」**ってやつでしたね(笑)。

中学時代はキャッチャーとピッチャーをやっていましたが、特に投げ方で悩んだり、気になったりするようなことは一切ありませんでした。大きな故障もなく、中学野球までは非常に順調に過ごせました。

高校は、たまたま野球推薦をもらえたので、野球をやるために行っていたようなものです。すべてが順調で、不安なんて何一つなかったあの頃…。

 

■ 1年夏、「気合いと根性」ではどうにもならない現実

 

入部当初はピッチャーでしたが、当時の高校野球ですから、「先輩が怖い」なんてのは今でもある話で大したことではないですね。

元々コントロールは良い方ではなかったので、「今日投げてみないとストライク入るかはわかりません!」って感じでした…w。というわけで、ピッチャーは夏ぐらいに首になりました( ´∀`)チーン。

 

■ 新チームで受けた「悪魔の囁き」

 

そして新チームが始まり、悪魔の囁きが訪れます。

新チームからはキャッチャーに転向し、オープン戦では試合に出たり出なかったりと、切磋琢磨して練習に励んでいました。そんなある日、監督からの一言が私の運命を大きく変えます。

監督:「おい、お前。キャッチャーなんだからもっと後ろ小さくしてコンパクトに投げろ!」

自分:「はい!」

はい。悪魔の囁き到来です。

所謂、昭和の「キャッチャー投げ」ってやつですね。「とってから早く投げろ!」という、スピードを重視した指導です。そして、どちらかというと素直な方だったので、その言われたことを忠実にやるタイプでございました。

 

■ 身体に出始めた最初のサイン

 

その指導に従って練習をしていく中で、身体に異変が起こり始めます。

「あれ?肩痛い?」

今までにない、初めての感覚が身体に出てきました。

それでも、「痛い」なんて、当時の自分には絶対に言えなかったですよね。キャッチャーとして試合に出始めたばかりで、やっと掴んだチャンスでしたから。「痛い」と言えば「根性がない」「サボっている」と思われてしまう、そんな空気でした。

今思うと、あの頃は心身ともにボロボロでしたわw。

 

■ 負の連鎖と決定的な瞬間

 

そうしているうちに、悪送球が増えて来るようになりました。

**「おい!ちゃんと投げろ!」**って先輩、同級生に怒られる毎日です。そりゃ、キャッチャーが悪送球を繰り返せば怒られて当たり前ですよね。

でも、一度こういうマインドになると、もう正常な判断ができなくなるんです。

痛くて、投げられない。

でも、痛みを隠して投げる。

投げたけど、狙ったところに行かないので怒られる。

もう、滅茶苦茶ですw w w

そして、すべてが崩壊した、とある日がやってきます。

それは、ピッチャーに返球する時でした。

僕が投げた球が、マウンドの半分のところでワンバンしました。

これで完全終了です。


【前編の結び】

この瞬間、私の高校野球は一変しました。そこから待ち受けていたのは、「なぜ投げられないのか」と自分を責め続ける地獄の日々でした。

後編では、この悪送球を生んだ**「魔の投げ方」がなぜ脳に上書きされてしまったのか**、そして結局私が克服できなかった理由について語ります。そして、今の私だからこそ言える、イップス克服のための最も重要なヒントをお伝えします。

**【後編】**に続く。どうぞご期待ください!

親御さんへ 成長期のオスグッドについて思うことをダラダラ語る【第2回】

前回は、オスグッドを巡る「あるある」の1つ目として、**「湿布と安静、そして痛みに慣れてしまうことの危険性」**について熱く語らせていただきました。多くのお父さん・お母さんのモヤモヤに、少しでも光を当てることができていれば幸いです。

さて、今回深掘りするのは、現場で非常によく聞くアドバイス、「オスグッドあるある」の2つ目です。

 

2、「大腿四頭筋のストレッチをやろう!」…こんなの痛くてできないわ(・Д・)

 

これ、指導者や専門家からよく言われるフレーズですよね。

「太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が硬いから、しっかりストレッチして緩めなさい」と。しかし、本当にそれでいいのでしょうか?

痛い場所に、さらに負担をかけるようなケアを、子どもに無理強いする必要はありません。

今回は、なぜこのストレッチが現実的ではないのか、そして**「痛くないのに効果的なアプローチ」**はどこにあるのか、ダラダラと、しかし核心に迫って解説していきます。


なぜ、多くの指導者が一言目には**「大腿四頭筋が硬いからストレッチをしなさい」**というのでしょうか?

その理由は、シンプルです。教科書にそう書いてあるからです!

確かに、解剖学の構造の話をすれば、大腿四頭筋は骨盤から始まり、オスグッドで痛くなる骨(脛骨粗面)に付着します。イメージとしては、その筋肉が柔らかくなれば、骨への負担がなくなる、となるわけで、それはそれで理論としてはよくわかります。

確かに、四頭筋のストレッチをすれば、筋肉の柔軟性は出る【かも】しれません。しかし、その時、痛みがある場所にまで強い牽引力が加わってストレスをかけてしまっていますよね?

って、誰も言わないんです。

だって冷静に考えればそうですよね?痛めている場所を、より痛くするようなケアは、本当に効果的と言えるのでしょうか。

というわけで、今現在オスグッドの痛みに悩むお子さんが日々頑張っているそのストレッチは、一旦やめていただきたいと私は考えています(もちろん私見です)。

お子さんからすれば、痛くて炎症を起こしている骨を「もっと剥がされる行為」に等しいわけで、まさに「地獄」です。まだセルフなら加減できますが、ペアになってうつ伏せで指導者や仲間からぐいぐい伸ばされた日には最悪ですよね。。。

確かに、ストレッチが終わった後に一時的な爽快感はあるので、「よくなった感」はあります。しかし、それは一時的なもの。根本的な解決にはなっていません。

 

【次回予告】

次回は、「オスグッドあるある」の3つ目、**「骨盤が歪んでるって話になるんですが何を基準に歪んでるって言ってるの?」**という、多くの人が疑問に感じているテーマに切り込みます。

静止した状態の「歪み」を直すだけでは、なぜスポーツ障害は治らないのか?

親御さんへ 成長期のオスグッドについて思うことをダラダラ語る

オスグッドで悩んでいる子供は、スポーツを頑張る子たちにとって、もはや珍しくありませんね。

私自身はオスグッドの経験はないので、実際の痛みがどの程度かはわかりませんが、日々の指導やケアを通じて、その痛みがどれほどのものか、十分すぎるほど理解しています。子供達の歩き方やエコー画像を見て想像する限り「本当に痛いんだろうな」と日々感じております…(´Д` )

さて、このオスグッド何が原因なのか?なんていうのは昨今、ネットで検索、SNSで調べれば情報は山のように出てくるので、なんとなくはお分かりですね。でも、情報が多すぎて混乱しているなんて事もあるのではないでしょうか?

特に私が現場でよく目にする「オスグッドあるある」を列挙します。

1、痛みが引くまで「安静」

確かに痛みがあるうちはスポーツなんてやったら悪化するだけなんですが、親御さんが一番モヤモヤするのは**「とりあえず全治2週間」**で様子を見ましょうと言われたときではないでしょうか?

絶対2週間では治らないですよね…(これには色々とカラクリがあるので、またどこかで深掘りします)。

そして、また2週間→2週間→2週間と一向に痛みが治る気配を見せないので、イライラや不安にもなってくるわけです。

これが、リハビリ(体外衝撃波や超音波などが現在の主流)をしているならまだわかります。**「湿布と安静」**って、オイオイΣ੧(❛□❛✿)って私は思うわけです。

こういう状況を繰り返していると、やがて子どもは痛みに慣れてしまうんですよね。「痛いけど、これくらいならできちゃう」。あるいは、「運動し始めると痛くなくなる」という状態です。

これ、実は一番危険です。

古い考えの方は、「血流が良くなって痛みがなくなったんだろ!」なんて言いますが、それは全くの誤解です。

お父さんやお母さんも、肩こりや腰痛はありませんか?ものすごく痛いわけじゃないけど、なんとなく日常生活は送れちゃうし、多少の無理もできますよね?でも、常に体には「痛い」という感覚は残っている感じ…。

お子さんが抱えているのは、それと同じなんです。痛みが消えたのではなく、「慣れてしまっている」だけなんですね。

1つ目から、つい熱くダラダラと語ってしまい長くなってしまいました(笑)。

今回のまとめとして、**「湿布と安静、そして痛みに慣れてしまうことの危険性」**について、親御さんと共有できていれば幸いです。

そして次回は、オスグッドあるあるの2つ目、**「大腿四頭筋のストレッチをやろう!」**という、現場でよく耳にする指導の落とし穴についてお話しします。

「痛くてできないストレッチを無理にやる必要はない!」

多くの方が信じているオスグッドの“本当の原因”に関する誤解を、さらに深掘りしていきます。どうぞお楽しみに!

口は食べるもの、鼻は呼吸するもの。当たり前が教えてくれる体の真実

「口呼吸の方が楽」そう感じていませんか?

「昔から口で呼吸しちゃうんだよね」「鼻が詰まってるから仕方ない」そう思っている方もいるかもしれません。本当にそうで大丈夫?
確かに口でも呼吸はできますが、本来の呼吸器は鼻。口は消化器官です。呼吸をするなら鼻、食べるなら口。これはごく当たり前のことのように思えますよね。

でも、あえて言わせてください。もしかしたらその「当たり前」に、あなたの体の不調が隠されているかもしれません。

口呼吸が楽な理由

口呼吸が「楽」だと感じるのには、実はちゃんとした理由があります。口から息を吸うと、一気に大量の空気を取り込めるからです。特に、ストレスや緊張を感じている時、私たちの体は無意識のうちに**「闘うか、逃げるか」**の態勢に入り、すぐに動けるようスタンバイします。所謂、交感神経が優位な状態の事です。全力で走った後に肩で息を吸ってハーハーしている時の呼吸状態ですね。このとき、心拍数が上がったり、筋肉が緊張したりしますが、それに合わせて呼吸も速く、浅くなります。口から大きく息を吸い込むのは、この緊急事態モードの呼吸と似ているのです。

無意識のサインに気づいていますか?

「じゃあ、別に口呼吸でもいいじゃん」と思うかもしれません。でも、体の構造を少しだけ考えてみてください。鼻にはフィルター機能があり、ウイルスや細菌、ホコリなどをキャッチしてくれます。また、吸い込んだ空気を温めて湿度を与え、肺への負担を減らす働きも。口には、残念ながらそういった機能はありません。

さらに、口呼吸が習慣化すると、私たちの体は常に緊急事態のサインを受け取り続けることになります。これは、いわば自律神経がアクセルを踏みっぱなしの状態。本来なら休息モードに入るべき時も、無意識のうちに緊張状態が続いてしまうのです。


体と心を操る「見えない司令塔」

私たちの体には、意識的に動かせる部分(手足を動かすなど)と、無意識に動いている部分(心臓を動かす、消化活動など)があります。この無意識の働きをコントロールしているのが自律神経です。自律神経には、活動モードの交感神経と、リラックスモードの副交感神経があり、このバランスがとても大切。

でも、唯一、意識してコントロールできる自律神経の働きがあります。それが「呼吸」です。

ゆっくりと深い呼吸をすると、副交感神経が優位になり、心拍数が落ち着いてリラックスモードに切り替わります。反対に、浅く速い呼吸をすると、交感神経が優位になり、体が緊張モードになります。

口呼吸が習慣になっている方は、無意識に浅い呼吸を繰り返しているのかもしれません。それが、肩や首のこり、慢性的な疲労、イライラ、そしてもしかしたら痛みの原因にもつながっている可能性があります。

呼吸を見直すことは、自分自身を見つめ直すこと

「口呼吸が楽」だと感じるのは、もしかしたらあなたの体が、長年のストレスや緊張に慣れてしまっている証拠かもしれません。呼吸は、あなたの心と体が今、どんな状態にあるかを教えてくれる大切なサインです。

ボールを投げ始めは痛みがあるが、投げているうちに痛みがなくなるのは大丈夫?それ、ちょっと待った!

危険信号を見逃してない?ボールを投げ始めの痛みと体の不思議な関係

野球やソフトボール、その他ボールを投げるスポーツをしている皆さん、こんな経験ありませんか?

「投げ始めは肩や肘がちょっと痛いけど、何球か投げているうちに痛みがなくなって、その後は普通に投げられるから大丈夫!」

これ、多くの人が「よしよし、体が温まってきてほぐれたんだな!」と思いがちですよね。実際、私も昔はそう思っていましたし、周りにもそういう人がたくさんいました。でも、本当にそうでしょうか?その「大丈夫」の裏に、実は大きな落とし穴が隠れているとしたら……?

その「大丈夫」、本当に大丈夫?

考えてみてください。もしあなたの車のエンジンから、最初は変な音がするのに、しばらく走っていたら音がしなくなったとします。あなたは「やった!直った!」と思いますか?それとも「もしかして、もっと悪いことになってるんじゃ…?」と心配になりませんか?

体も同じです。痛みが一時的に消えるのは、体が痛みを「感じなくしている」だけで、問題そのものが解決したわけではない可能性が高いんです。むしろ、危険信号を見落としているかもしれません。

体が痛みを「感じなくする」メカニズム

では、なぜ痛みを感じなくなるのでしょう?これには、私たちの体に備わる自律神経が深く関わっています。自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があります。

ボールを投げ始めの痛みは、炎症や組織の損傷など、体に何らかの異常があるサインです。体が「やばいぞ!」と警告を発している状態ですね。しかし、投げ続けているうちに、体は「このままでは投げられない、でも投げなければならない」という状況に直面します。すると、交感神経が優位になり、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、一時的に痛みの感覚を麻痺させることがあるんです。

これは、体が「緊急事態モード」に入り、目の前のタスク(ボールを投げること)を遂行するために、痛みを一時的にシャットアウトしているような状態です。例えるなら、火災報知器が鳴っているのに、音がうるさいからといって電池を抜いてしまうようなもの。火事は消えていませんよね?


「今は大丈夫」が「将来大丈夫じゃない」に繋がるかも

一時的に痛みが消えることで「治った」と錯覚し、そのまま練習や試合を続けてしまうと、どうなるでしょうか。体への負担は蓄積され、気づかないうちに小さな損傷が大きな怪我へと発展してしまう可能性があります。

例えば、肩の腱に小さな炎症があったとして、痛みが引いたからと無理に投げ続けると、その炎症が悪化して断裂に繋がってしまうことだってあります。肘の成長軟骨に負担がかかっていたとして、痛みが消えるからと投げ続けると、将来的に骨の変形や遊離体(関節ねずみ)の原因になることも。

あなたの体は、本当に「大丈夫」だと訴えていますか?

投げ始めに痛みを感じるということは、あなたの体があなたに「ちょっと待って!無理しないで!」とサインを送っている証拠です。そのサインを見逃さず、立ち止まって体の声に耳を傾けることが、長く健康にスポーツを続けるためには不可欠です。

もし投げ始めに痛みを感じたら、まずは無理をせず、痛みの原因を探ってみることをおすすめします。そして、痛みが引いても、それが本当に「治った」のか、それとも体が一時的に痛みを麻痺させているだけなのか、見極めることが大切です。

あなたの体は、大切な資本です。その資本を長く、健康に保つために、今日の「大丈夫」が明日の「大丈夫じゃない」にならないよう、賢くケアしていきましょう。

体がしなやかに動くのは、筋肉よりも「関節」のおかげ?

「筋肉を意識して動け!」は間違い?あなたの体の常識を覆す、動きの真実

「もっと力を入れて!」「この筋肉を意識して!」スポーツやトレーニングの場で、あるいは日常生活の中でも、そう指導されたり、自分自身に言い聞かせたりした経験はありませんか?私たちは、体が動くのは、筋肉が収縮することで、その筋肉が直接体を動かしている、と当たり前のように考えていますよね。だからこそ、「鍛えるべきは筋肉だ!」と信じて、筋力トレーニングに励む人も多いでしょう。でも、本当にそうでしょうか?もしかしたら、その常識、あなたの体の本当の動き方とは、ちょっと違うかもしれませんよ。


今までの常識的な考えでの考察

私たちは、腕を曲げるのは上腕二頭筋が縮むから、足を上げるのは太ももの筋肉が働くから、というように、個々の筋肉が収縮・弛緩することで体が動く、とシンプルに理解してきました。筋肉が体を動かす主役であり、その筋肉を強くすることが、動きを良くする、パフォーマンスを上げるための絶対的な方法だと信じてきたことでしょう。


違う角度からの考察

しかし、もし体が動くのは、個々の筋肉が単独で動いているのではなく、むしろ関節がスムーズに、そして連動して動くことで、その結果として筋肉が使われているとしたらどうでしょう?そして、この関節の動きこそが、あなたの心身の状態と深く関わっているとしたら…?


医学的な理由を添えて

私たちの体は、約200個の骨と、それらを繋ぐ多数の関節によって構成されています。筋肉は確かに収縮しますが、その収縮の目的は、多くの場合、関節を動かすことです。つまり、筋肉は関節を動かすための「道具」であり、主役は関節の「動き」そのものなのです。

例えば、腕を上げる動作を考えてみましょう。上腕二頭筋だけでなく、肩関節、肩甲骨、さらには背骨の動きまでが連動しています。もしどこかの関節の動きが制限されていれば、いくら特定の筋肉を意識しても、スムーズな動きはできません。関節が適切な可動域で、無理なく動くことによって、必要な筋肉が自然と効率よく使われるのです。

そして、この関節の動きの滑らかさは、私たちの体の反応と密接に関わっています。ストレスや緊張状態が続くと、私たちの体は無意識のうちに硬くなり、関節の動きも制限されやすくなります。これは、体を守るために交感神経が優位になり、筋肉が過緊張状態になるためです。肩こりや腰痛なども、多くの場合、筋肉の硬直だけでなく、関節の動きの悪さが根本にあることが多いのです。関節がスムーズに動かない状態は、体にとってストレスとなり、さらに体が緊張するという悪循環を生み出します。

この体の緊張、特に交感神経の過剰な活性化は、呼吸のパターンに大きく影響します。体が緊張して関節が硬くなると、胸郭の動きも制限され、呼吸は浅く、速くなりがちです。浅い呼吸は、さらに体を緊張させ、心身の緊張状態を悪化させてしまいます。逆に、深くゆっくりとした呼吸は、心身をリラックスさせ、筋肉の緊張を緩め、関節の可動域を広げる手助けをしてくれます。

「筋肉を意識して動く」というこれまでの常識は、決して間違いではありませんが、もし体がどこか不調を感じているなら、一度「関節の動き」に目を向けてみませんか?関節が自由に動くことで、あなたの体はもっとしなやかに、そして無駄な力みなく動けるようになるかもしれません。


あなたの体の動き、そして呼吸の関係について、改めてじっくり考えてみませんか?

その怪我、治りが遅いのはなぜ?」どんな名医も知らない回復の”土台”とは

どんなに良い治療を受けても「あれ?」怪我の回復、根本に目を向けられていないと全てが水の泡

お子さんが怪我をした時、親として「早く良くなってほしい」と願うのは当然ですよね。すぐに病院へ連れて行き、お医者さんの指示通りに薬を飲ませたり、リハビリに通わせたり…。「これなら治るはず!」と、あらゆる手を尽くすことでしょう。

でも、どんなに良いと言われる治療を受けても、ギプスが外れても、リハビリを頑張っても、なぜか回復が遅い、痛みが長引く、以前のように動けない…。「どうしてうちの子だけ?」と、もどかしさや不安を感じたことはありませんか?


「治療のせい?」そう考える前に、見落とされがちな「回復の前提」

「もしかしたら、この治療法はうちの子には合わないのかも」「もっと他に良い治療があるはず」

そう思って、次から次へと新しい治療法を探してしまう方もいるかもしれません。もちろん、お子さんに合った治療法を見つけることは大切です。しかし、実はその前に、多くの方が**見落としがちな「回復のための前提」**があるとしたら、どうでしょうか?

それは、「どんなに素晴らしい治療も、お子さん自身の**『回復力』**が十分に働いていなければ、その効果を最大限に発揮できない」という視点です。

例えば、折れた枝をどんなに丁寧に添え木で固定し、栄養剤を与えても、その木自体が生命力に満ちていなければ、新しい葉をつけ、元通りに成長するのは難しいかもしれません。

お子さんの体も同じです。怪我の部位に直接アプローチする「治療」は大切ですが、お子さんの体が本来持っている「回復力」や「自己修復力」が弱っている状態では、せっかくの治療も、地盤が不安定な上に家を建てるようなものになってしまうことがあるのです。


医学的見地から見る「回復力」と自律神経・呼吸の深い関係

では、お子さんの「回復力」とは具体的に何でしょうか? そして、それはどのようにして支えられているのでしょうか?

ここで深く関係してくるのが、私たちの体内のバランスを保つ司令塔である自律神経です。自律神経は、心臓の鼓動、血流の調整、そして炎症を抑えたり、傷ついた細胞を修復したりする再生プロセスといった、生命維持に不可欠な働きを無意識のうちにコントロールしています。体が本来持っている「回復力」とは、まさにこの自律神経が適切に機能し、心身の調和がとれている状態だと言えます。

しかし、怪我そのもののストレスに加え、痛みや不安、あるいはリハビリへの焦りなどが続くと、この自律神経のバランスが乱れてしまいます。特に、体を興奮させ活動を促す交感神経が優位になりすぎると、体が常に緊張状態となり、回復を担う副交感神経の働きが十分に発揮されません。この状態では、血流が悪くなったり、炎症が長引いたり、細胞の修復が遅れたりして、「回復力」が低下してしまうのです。

そして、この自律神経のバランスと深く連動しているのが「呼吸」です。浅く速い呼吸は交感神経を優位にし、体を緊張させます。一方、深くゆったりとした呼吸は副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせ、血流を促進し、回復力を高める働きがあります。

どんなに良い治療をしても期待通りの結果が得られない場合、もしかしたらお子さんの「回復力」の土台となる自律神経と呼吸のバランスが崩れているのかもしれません。


お子さんの「回復力」、呼吸から見直してみませんか?

お子さんの怪我の回復がなかなか安定しない時、次の治療法を探す前に、まずはお子さん自身の「回復力」の土台に目を向けてみませんか?

そして、そのカギとなるのが「呼吸」です。日々の生活の中で、お子さんの呼吸が浅くなっていないか、痛みや不安で呼吸が速くなっていないか、そっとお子さんのお腹に手を当ててみてください。その手を当てた感覚、フィーリングが、心地よい呼吸なのか、それとも居心地の悪い呼吸なのか。それが今のお子さんの精神状態を教えてくれるサインです。

お子さんの健やかな未来のために、ぜひ「呼吸」という視点から、その「回復力」を最大限に引き出すサポートを考えてみませんか?

呼吸が救う? 長年悩む肩こり・腰痛と自律神経の意外な関係

その肩こり・腰痛、もしかして「常識外れ」かも?

「肩こりや腰痛は、姿勢が悪いから」「筋肉が硬いから」――。長年、そう信じてマッサージに通ったり、ストレッチを頑張ったりしていませんか? もちろん、それらのケアが無駄だというわけではありません。でも、もしあなたが「何をしても治らない…」と感じているなら、もしかしたらその「常識」が、あなたの身体が本当に伝えたいメッセージを見過ごさせているのかもしれません。

私たちは、痛みを感じると、その原因を身体のどこかに探しがちです。「ここが硬い」「ここが歪んでいる」と。でも、本当にそうでしょうか? もし、身体の歪みや硬さだけが原因なら、世の中から肩こりや腰痛に悩む人はいなくなるはずですよね。

痛みは「危険」を伝えるサイン?

実は、痛みって、脳が「何か危険だぞ!」と身体全体に伝えるための信号なんです。怪我や炎症が原因で起きる痛みもあれば、神経そのものが傷ついて起こる痛みもあります。でも、最近注目されているのが「痛覚変調性疼痛」という考え方。これは、組織や神経に損傷がなくても、脳の神経回路の変化によって痛みが生じる、というものなんです。

つまり、あなたの肩こりや腰痛、もしかしたら「脳の誤作動」で起きている可能性もあるってこと。「え、そうなの?」って思いますよね。この「脳の誤作動」の背景には、自律神経が大きく関わっていると考えられています。

治らない痛みの裏に「自律神経」のサイン?

私たちの身体には、「自律神経」という素晴らしいシステムが備わっています。心臓を動かしたり、消化を助けたり、体温を調節したり…私たちの意識とは関係なく、生命維持に必要なことを全部やってくれています。そして、この自律神経には、アクセルの役割を果たす「交感神経」と、ブレーキの役割を果たす「副交感神経」があります。

ストレスが多い現代社会では、知らず知らずのうちに交感神経が優位になりがちです。パソコン作業、スマホ操作、さらにはマスク生活なんかも、無意識に呼吸を浅くして、交感神経を刺激してしまうことがあるんです。交感神経が優位な状態が続くと、身体は常に「闘うか、逃げるか」の臨戦態勢に。筋肉は緊張し、血流が悪くなり、まさに肩こりや腰痛が起きやすい状態になってしまうんです。

さらに、興味深いのは、この自律神経が私たちの「感じ方」にも影響を与えるということ。例えば、交感神経が優位な状態だと、外界を「脅威」とみなしやすくなります。すると、身体も防御反応として緊張しやすくなり、ちょっとした刺激でも痛みとして強く感じてしまうことがあるんです。

呼吸が「鍵」を握る?

では、この自律神経の乱れをどうにかすればいいの? そこで注目したいのが「呼吸」です。呼吸って、普段は無意識にしていることだけど、実は唯一、意識的にコントロールできる自律神経の機能なんです。

ストレスで浅くなりがちな呼吸を、意識的に深く、ゆっくりと行うことで、副交感神経を優位にすることができます。深呼吸をすることで、心拍の変動が大きくなる「呼吸性洞性不整脈」という現象が起きやすくなります。これは、健康な人に現れる正常な生理反応で、自律神経がしっかり働いている証拠なんです。

特に、吸う息よりも吐く息を長くするような呼吸は、副交感神経を活性化させやすいと言われています。もちろん、無理に頑張りすぎると、かえって緊張してしまうこともあるので、リラックスして心地よくできる範囲で試してみるのがポイントです。

もし、長年悩んでいる肩こりや腰痛があるなら、もしかしたらそれは身体が「ちょっと疲れてるよ」「リラックスが必要だよ」と教えてくれているサインなのかもしれません。身体の歪みや筋肉の硬さだけでなく、ぜひご自身の呼吸、そして自律神経の状態にも意識を向けてみてください。

もしかしたら、あなたの「治らない」という常識が、新しい視点で見つめ直すことで、ガラッと変わるかもしれませんよ。

骨盤の歪み、ホントにダメ?巷のウワサを検証!

「腰が痛い〜」「肩がガッチガチ…」「股関節や膝がなんか変?」

こんな体のSOS、経験ありますか?病院に行ったり、整体に行ったりすると、「あ〜、これは骨盤が歪んでますね!」なんて言われること、よくありますよね。まるで骨盤の歪みが、すべての不調のラスボスみたいに言われちゃって…。

でも、ちょっと待った!本当に骨盤の歪みって、そんなに「悪者」なんでしょうか?今回は、その巷のウワサの真実に、ポップに迫ってみましょう!

え、人間の体って左右対称じゃないの?!

いきなりですが、クイズです!私たちの体って、よ〜く見ると左右対称だと思いますか?

答えは…「ノー!」なんです!

例えば、心臓は左寄りにあるし、肝臓は右側にドーンと構えていますよね。こんな風に、私たちの体の中って、実は最初から左右のバランスが違うのが当たり前なんです。

で、この左右差、実は骨格にもちゃ〜んと現れてるんです。もちろん、骨盤もその仲間!

痛くない人でも骨盤は「ゆがんでる」?!

「え、じゃあ私、痛くないのに骨盤ゆがんでるってこと?」

そうなんです!もしあなたが今、体のどこにも痛みを感じていなくても、プロの目で骨盤をチェックしてもらったら…ほぼ確実に、何らかの「左右差」が見つかるはず!

つまり、痛みがあるから「骨盤が歪んでる!」って大騒ぎになっちゃうだけで、実は私たちの骨盤って、多かれ少なかれ、常にちょっとずつ左右非対称なのが「普通」なんですよ。

「歪み=悪」って決めつけは、ちょっと待って!

じゃあ、なんでこんなに「骨盤の歪み=悪」って言われちゃうんでしょう?

それはね、「痛みがあるなら、その原因を見つけてやっつけろ!」っていう考え方が強いからかもしれません。そして、目に見えやすい「歪み」を原因にしちゃえば、分かりやすいですもんね。その結果、「歪み=悪者」っていう単純な図式ができちゃったのかも。

もちろん、すっごく変な姿勢を続けてたり、同じ動きばっかりしてると、骨盤のバランスが崩れて体の不調につながることもゼロじゃないですよ。でも、ただ「左右差があるからダメ!」って決めつけちゃうのは、ちょっと視野が狭いかも?

大事なのは「見た目」より「機能」!

私たちが本当に注目すべきは、骨盤の「見た目の歪み」だけじゃありません!もっと大事なのは、体全体のトータルバランスが取れているか、そして骨盤が本来の**仕事(機能)**をちゃんと果たせているか、ってことなんです。

例えば、左右差があっても、それがあなたの体をしっかり支えて、スムーズに動かすのに全然問題ないなら、それは「あなたにとってのベストな状態」ってことになりますよね!

そして、この「機能」をしっかり発揮するために、とっても大切なのが**「インターナルコア」**の働きなんです!インターナルコアとは、体の深層にある筋肉群のことで、骨盤の安定や姿勢の維持に欠かせない、まさに体の「土台」となる部分。ここがしっかり働くことで、見た目の歪みにとらわれず、体全体がしなやかに、そして力強く動けるようになるんです。

インターナルコアは「呼吸」で目覚める!

さらに、このインターナルコアを効果的に機能させる鍵は、実は**「呼吸」**にあるんです!深い呼吸を意識することで、インターナルコアの筋肉が活性化され、骨盤が安定し、体全体の連動性が高まります。

骨盤の「歪み」より「働き」に注目!

もし今、体の不調に悩んでいるなら、「骨盤が歪んでるから…」って諦めちゃうのはもったいない!あなたの体全体がどんな状態なのか、そしてどうすればもっと快適に、もっと楽しく動けるのか正しい呼吸力を身につけましょう!

「食」の常識を疑え!栄養過多時代を生き抜く、自律神経と呼吸のチカラ

栄養に気を遣ってるはずなのに、なんだか体が重い?

 

「健康には野菜が大事!」そう思って、毎日コンビニでサラダを買って食べているあなた。 「大豆は体に良いらしい」と聞いて、欠かさず納豆を食卓に並べているあなた。 きっと、真面目に、そして一生懸命、自分の健康のために努力していることでしょう。素晴らしい心がけですよね!

でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?

そのコンビニのサラダ、本当に「新鮮で栄養満点」だと思いますか? シャキシャキ感を保つために、もしかしたら防腐剤や次亜塩素酸ナトリウムといった消毒剤が使われているとしたら…? 毎日食べている納豆の原料、その大豆はどこから来て、どんな環境で育ったのでしょう?もしかしたら、海外の広大な農場で、大量の農薬や化学肥料が使われているとしたら…?

 

「良いもの」を食べているつもりが…常識が揺らぐ瞬間

 

「え、そうなの?」「まさか…」と、ちょっと驚いた人もいるかもしれませんね。 私たちは「野菜=健康的」「大豆=体に良い」という常識を信じて疑いません。それはもちろん、間違いではありません。本来の野菜や大豆は、素晴らしい栄養源です。

しかし、現代社会の流通システムや大量生産の背景には、私たちの知らない「ひと手間」が加わっていることがあります。便利さや見た目の良さを追求するあまり、本来の食品が持つ生命力や、私たちの体に与える影響が見過ごされている可能性はないでしょうか?

もし、あなたが良かれと思って食べているものが、知らず知らずのうちに体に負担をかけているとしたら…。栄養に対するあなたの考え方は、少し変わりませんか?

 

「毒」は外からだけじゃない?体内の負担と自律神経

 

「でも、そんなこと言ったら、食べるものがなくなっちゃうよ!」 そうですよね。全ての食品の生産背景を完璧に把握して、無添加・無農薬のものだけを選ぶのは、現実的ではありません。もちろん、意識することは大切ですが、神経質になりすぎるのもまた、ストレスになりますよね。

ここで大切なのは、「完璧なものを食べること」だけが健康への道ではない、という視点です。

私たちの体は、素晴らしい機能を備えています。それは、多少の「毒」(とまではいかなくても、体に負担をかけるもの)が入ってきても、それを排泄したり、解毒したりする能力です。肝臓や腎臓、腸といった臓器が、日夜私たちの体を守るために働いてくれています。

しかし、この解毒・排泄システムにも限界があります。もし、常に消化に負担のかかるものばかり食べていたり、添加物や農薬といった「異物」が大量に入ってきたりしたら、体は常に解毒・排泄に追われ、本来の修復や再生にエネルギーを回せなくなってしまいます。

この「体が常に頑張っている状態」は、知らず知らずのうちに交感神経を優位にさせ、自律神経のバランスを崩す原因になります。自律神経が乱れると、

  • 消化吸収の効率が落ちる(せっかくの栄養も活かせない)
  • 老廃物の排泄が滞る
  • 疲れが取れない
  • 免疫力が低下する
  • なんだかイライラする …といった悪循環に陥ってしまう可能性があるのです。つまり、本当の健康は「何を食べるか」だけでなく、「食べたものをいかに処理できるか」にかかっていると言えるかもしれません。

 

「出せる体」は「呼吸」から!

 

では、どうすれば「多少の毒も受け止め、排泄できる体」を育めるのでしょう? 答えは、シンプルに「体を休ませ、機能を高めること」です。

特に意識してほしいのが「呼吸」です。 現代人は、ストレスやデスクワークで呼吸が浅くなりがち。浅い呼吸は、常に交感神経優位の状態を助長してしまいます。 意識的に深く、ゆったりとした腹式呼吸を行うことで、副交感神経が優位になり、体がリラックスモードへと切り替わります。副交感神経が優位になると、消化器官の働きが活発になり、血流も改善されるため、解毒・排泄機能もスムーズに働くようになります。

完璧な栄養を追い求めるよりも、まずは自分の体が持つ「処理能力」を高めること。 そのためには、食事の内容を見直すことはもちろん、そして何より、体を内側から整える「呼吸」を意識してみませんか? 「良いもの」をたくさん摂ること以上に、「不要なものをきちんと排泄できる」体こそが、真の健康の秘訣かもしれませんよ。

ちゃんと、疲労感じてますか?

皆さん、練習や試合の後、疲労を感じていますか?

「いやいや、全然疲れてないっすよ!」

特にアスリートの方は
そう答える方、多いんじゃないでしょうか?でもそれって、本当に疲れてないんでしょうか?もしかしたら、あなたの体と心のバランスが崩れていて、疲労があるのに「疲労を感じない体」になっているだけかもしれませんよ!


「疲労を感じない」体に隠されたサイン

疲労を感じていないように見えても、実はこんなサインが出ていませんか?

  • 日中、とにかく眠くなる

  • 朝、スッキリと目覚めが良い (あれ?いいことじゃないの?と思ったあなた、要注意!)

  • 運動していると、なぜか痛みが消える

「え、これって普通じゃないの?」と思った方もいるかもしれませんね。でも実はこれら、自律神経のバランスが崩れているサインでもあるんです。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、体の調子を整えてくれる大切な神経。ここが乱れると、疲労を感じにくくなったり、体の不調として現れたりすることがあるんです。

自律神経の状態は、心身のパフォーマンスに深く関わっていると考えられています。


疲労回復の鍵は「質の良い睡眠」と「呼吸」

じゃあ、この「疲労を感じない体」から抜け出して、本当の意味でパフォーマンスを上げるにはどうしたらいいんでしょう?

一番大切なのは、ズバリ疲労の回復には睡眠です!

「なーんだ、当たり前じゃん!」と思ったあなた、ちょっと待ってくださいね。ここでいう睡眠は、ただ寝る時間を増やすだけじゃないんです。本当に重要なのは、いわゆる**「睡眠の質」**を上げること。

そして、その睡眠の質を上げるために、とーっても大切なのが**「呼吸」**なんです!

呼吸は、心身の調律を行い、自律神経のバランスを整えるために重要な要素です。東洋医学の「気」という概念が「呼吸」という言葉にたどり着いたように、呼吸には深い知恵が隠されています。

日頃から自分の呼吸に意識を向けることで、自律神経のバランスを整え、質の良い睡眠を手に入れ、本当の意味での疲労回復を目指しましょう!


皆さん、自分の体と心の声に耳を傾けて、最高のパフォーマンスを発揮してくださいね!

【オスグッドの真実】膝の痛み、その治療法で本当に大丈夫?

成長期のお子さんや、スポーツを頑張る学生さんにとって、膝の痛みは本当にツラいものですよね。

「膝のお皿の下がポコッと出て痛い…」そんな症状があったら

それはもしかしたらオスグッド・シュラッター病かもしれません。

オスグッドってどんな病気?

オスグッドは、一般的に10歳〜15歳くらいの、特に男子に多く見られる膝の痛みです。膝のお皿(膝蓋骨)の下にある、脛の骨のでっぱり(脛骨粗面)が、運動によって引っ張られすぎて炎症を起こし、痛みが出たり、ひどい場合は骨が少し剥がれてしまったりすることもあります。


「太ももストレッチ」は逆効果?!オスグッド治療の落とし穴

病院に行くと、「安静にしてください」「太ももの筋肉(大腿四頭筋)をストレッチしましょう」と言われることが多いかもしれません。でも、ちょっと待ってください!実はこの**「大腿四頭筋のストレッチ」が、オスグッドの患部を悪化させてしまう**ことがあるんです。

そもそも、オスグッドで痛いのは膝のお皿の下。痛いところに無理に負荷をかけるストレッチは、炎症をさらに強めてしまう可能性があります。それに、大腿四頭筋が硬いことが痛みの直接の原因ではない場合も多いんです。ただストレッチするだけでは、なかなか改善しないのが現状です。


オスグッドになりやすい子の意外な特徴とは?

「うちの子、なんでオスグッドになっちゃったんだろう?」そう思う方もいるかもしれません。オスグッドになりやすい子には、実はこんな特徴があるんです。

  • 胴体が細い:体の中心、いわゆる**「体幹」が安定していない**子に多い傾向があります。体幹がグラグラだと、膝に余計な負担がかかりやすくなるんです。

  • 腹式呼吸ができていない:胴体が細いこととも関連しますが、実はこれ、腹式呼吸がしっかりできていないサインでもあります。体幹を安定させるには、深い腹式呼吸でインターナルコアを使うことが不可欠なんです。

  • しゃがめない・うんち座りができない:しゃがもうとするとかかとが浮いてしまう、いわゆる「うんち座り」ができない子も要注意。これは股関節の柔軟性がない、というよりも、股関節をうまく使える感覚がない子に多く見られます。結果的に膝に負担がかかってしまうんです。


安静にするだけでは治らない!根本的なケアを

病院で言われる「安静、ストレッチ、湿布」の定番パターン。これで痛みが一時的に引くことはあっても、根本的な解決にはつながりにくいのがオスグッドの難しいところです。なぜなら、痛みの原因がそこにはないことが多いからです。

じゃあ、どうしたらいいの?

オスグッドのケアで本当に大切なのは、**「正しい腹式呼吸を定着させる」**ことなんです!

正しい腹式呼吸ができるようになると、体幹が安定し、全身のバランスが整います。すると、膝にかかる余計な負担が減り、本来持っている体の機能が正しく使えるようになるんです。

単に痛い部分だけを見るのではなく、体全体のバランス、特に「呼吸」を見直すことが、オスグッド克服への近道になりますよ。

【衝撃】鏡を見るほどフォームが崩れる?脳の錯覚が引き起こすトレーニングの罠

鏡を見てトレーニング?それがあなたの成長を妨げているかもしれません

トレーニングをする際、多くの方が当たり前のように行っていることがあります。それは、目の前の鏡に映る自分の姿を見ながらトレーニングすること。

「フォームを確認するためには必須でしょ?」

「自分の筋肉の動きを見ることで、効かせたい部位に意識が集中するじゃないか!」

そう思われた方も少なくないのではないでしょうか?確かに、鏡を使ってフォームをチェックしたり、筋肉の収縮を視覚で確認したりすることは、一見すると非常に合理的で効果的なトレーニング方法に思えます。

「こんなことありませんか?動画を撮ってもらうと自分の頭でイメージしているフォームと全然違う」

まさにそうなんです!鏡を見ながら「完璧」だと思っていたフォームが、いざ動画に撮って客観的に見てみると、「あれ?なんか違う…」と感じた経験、あなたにもありませんか?

しかし、もしその「当たり前」が、あなたのトレーニング効果を半減させ、さらには身体の不調に繋がっているとしたら…?


1.今までの常識的な考えでの考察:鏡を見るトレーニングの「メリット」とは?

私たちがトレーニング中に鏡を見る主な理由は、以下のような点が挙げられます。

  • フォームの確認と修正: 自分の身体の動きを目で見て確認することで、適切なフォームを維持し、怪我のリスクを減らすことができると考えられています。特に、新しい種目を導入する際や、特定の筋肉を意識したい場合に有効だと感じられます。

  • モチベーションの維持: 筋肉が収縮する様子や、身体の変化を視覚的に捉えることで、達成感やモチベーションの向上に繋がると言われています。

  • ターゲット部位への意識集中: 鍛えたい部位の筋肉の動きを直接見ることで、その部位に意識を集中させやすくなると感じることがあります。

これらは、まさに鏡を使うことの「メリット」として、広く認識されていることでしょう。


2.違う角度からの考察:その「当たり前」が、実は足を引っ張っている?

では、なぜ鏡を見てのトレーニングが「してはいけない」とまで言われることがあるのでしょうか。それは、人間の身体が持つ、より根源的な機能に関係しています。

あなたは、無意識のうちに「見られている自分」を演じていませんか?

鏡を見ることで、私たちの脳は**「自分が見られている」**という意識に強く支配されます。これは、カメラの前でポーズを取る時や、人前で話す時に、無意識のうちに「良く見せよう」と身体が動いてしまうのと同じ原理です。

トレーニングにおいても、この「見られている意識」は、本来の身体の動きを歪めてしまう可能性があります。例えば、

  • 自然な動きの阻害: 鏡に映る「理想のフォーム」に合わせようとするあまり、身体本来の連動性や自然な動きが失われ、不自然な力みや代償動作が生じやすくなります。

  • 視覚への過度な依存: 視覚情報に頼りすぎると、自分の身体が実際にどのように動いているのか、どの筋肉が使われているのかといった**「固有受容感覚」**(プロプリオセプション)が鈍くなってしまいます。これは、目隠しをしても自分の手足がどこにあるか分かる感覚のことです。この感覚が養われないと、鏡がない場所や、目を閉じた状態での身体操作が苦手になります。

  • バランス能力の低下: 視覚はバランスを保つ上で重要な要素ですが、鏡に意識が向くことで、脳が処理すべき情報が増え、かえってバランス感覚が不安定になることがあります。


医学的な理由:脳の「視覚依存」が引き起こす誤解

これらの現象は、私たちのと深く関係しています。脳が受け取る情報のうち、なんと約8割は視覚からの情報だと言われています。そのため、鏡という強い視覚情報が入ると、脳は「見られている」という状況を強く認識し、意識的なコントロールが過剰に働くようになります。

私たちの身体の動きは、本来、脳が無意識のうちに調整していますが、鏡を見ることでこの無意識の調整が妨げられます。まるでカメラの前でポーズを取るように、「良く見せよう」という意識が優先されてしまい、身体本来の自然な動きが歪んでしまうのです。

この過剰な意識的コントロールは、身体を不自然に力ませ、結果的に自律神経のバランスを崩すことにも繋がります。そして、このバランスの乱れが、本来自然であるべき呼吸にも影響を与えます。鏡に集中するあまり、知らず知らずのうちに呼吸が浅くなったり、力んだりしていませんか?

深く、そして自然な呼吸は、副交感神経を優位にし、身体をリラックスさせ、パフォーマンスを最大限に引き出すために不可欠です。しかし、鏡に映る自分を「監視」することで、この自然な呼吸が妨げられ、身体は常にストレス状態に置かれてしまう可能性があるのです。

つまり、鏡を見ることで、脳は視覚情報に過度に依存し、身体本来の固有受容感覚の発達を阻害することで、結果的に非効率で身体に負担をかけるトレーニングになってしまう可能性があるのです。


では、どうすれば良いのでしょうか?

大切なのは、自分の「内側」に意識を向けること。

  • 目を閉じて、自分の身体がどう動いているかを感じてみましょう。

  • 力を入れている部分だけでなく、リラックスしている部分にも意識を向けてみましょう。

  • そして、何よりも、ご自身の呼吸に意識を向けてみてください。

「え?本当にそんなことだけで変わるの?」と思われるかもしれません。しかし、この内側に意識を向けるトレーニングこそが、身体本来の能力を引き出し、より効率的で、怪我のリスクも少ない、真の「動ける身体」を作り上げていく鍵となるのです。

さあ、今日のトレーニングから、鏡ではなく、ご自身の身体と呼吸に意識を向けてみませんか?その変化に、きっと驚くことでしょう。

呼吸が変わると体調が変わる

疲れてる時のサインかも?あなたの「呼吸」、チェックしてみよう!🤔

前回のブログで「疲労を感じない体」についてお話ししましたね。実は、疲れている時って、あなたの**「呼吸」に変化**が現れていることが多いんです。今回は、その具体的な特徴と、意外と見落としがちなポイントをお伝えします!


疲れている時の「呼吸」ってどんな感じ?

「呼吸」って普段意識しないものですが、体が疲れている時はこんな特徴が出てくるんです。

  • 早く、浅く、短くなる:気づいたら「ハッ、ハッ」と、なんだか息切れしているような呼吸になっていませんか?

  • 息を吸う時間が長くなる:息を吸うのは頑張ってできるけど、吐くのがちょっと苦しい…と感じることも。

  • 息が吐けない(本人は吐いているつもり):自分ではしっかり吐いているつもりでも、実は十分に吐き切れていないケースも多いんです。


体の動きにも変化が!

呼吸の変化は、体の使い方の変化にもつながります。

  • 胸式呼吸になり、横隔膜が動かなくなる:疲れてくると、肩や胸を使って呼吸する「胸式呼吸」になりがち。本来、深い呼吸に欠かせない**横隔膜(おうかくまく)**の動きが制限されてしまいます。

  • 鼻呼吸から口呼吸になる:気づいたら口が開いて、口呼吸になっていませんか?口呼吸は、喉の乾燥や免疫力の低下にもつながると言われています。

  • 呼吸をしてもお腹が動かない:深い呼吸ができていると、息を吸う時にお腹が膨らみ、吐く時にへこみます。お腹がぺったんこのままなら、浅い呼吸になっているサインかもしれません。


「鼻から吸えばOK」は要注意!呼吸の落とし穴

「鼻から吸って、お腹が動けば腹式呼吸でしょ?」

そう思っている方も多いかもしれません。確かに基本はその通りなんですが、実はこれが呼吸の難しさであり、注意が必要なポイントなんです!

多くの人が「鼻から吸っていれば正しい腹式呼吸ができている」と思い込んでいますが、必ずしもそうとは限りません。疲労が蓄積していると、鼻から吸っていても横隔膜が十分に動かず、お腹の表面だけが動いている「偽の腹式呼吸」になっていることもあります。

大切なのは、表面的な動きだけでなく、呼吸の「質」。深い呼吸で自律神経を整えるためには、単に鼻から吸うだけでなく、しっかり横隔膜を使って、深く長く息を吐き切る意識がとても重要になります。

自分の呼吸に意識を向けることで、疲労のサインに気づき、より質の高い回復を目指しましょう!

「うちの子は大丈夫」と思っていませんか? 学生にも潜む燃え尽き症候群の落とし穴

燃え尽き症候群って、まさかうちの子が?〜「頑張り」の先に潜む見えない落とし穴〜

お子さんが毎日勉強や部活に励む姿は、親として誇らしいものですよね。「頑張っている証拠だ」と安心している方も多いのではないでしょうか? でも、もしその「頑張り」が、お子さんを心身ともにボロボロにしてしまうとしたら…?


「燃え尽き症候群」は、大人だけの話だと思っていませんか?

「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と聞くと、仕事に疲れた大人がなるもの、というイメージが強いかもしれません。「うちの子はまだ学生だし、関係ないだろう」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実は、そうとは限らないんです。

むしろ、将来への不安、友人関係の悩み、受験のプレッシャーなど、多くのストレスに囲まれている現代の学生こそ、燃え尽き症候群に陥りやすいと言われています。毎日目標に向かってひたむきに努力するお子さんほど、知らず知らずのうちに心身の限界を超え、ある日突然、エネルギーが枯渇してしまうことがあるのです。


「疲れているだけ」じゃない?燃え尽き症候群の意外なサイン

「最近、なんだか元気がないな」「勉強に集中できていないみたい」…お子さんの変化に気づいても、「一時的なものだろう」「ただ疲れているだけ」と軽く見てしまうことはありませんか?

しかし、それは燃え尽き症候群の初期サインかもしれません。

例えば、

  • 今まで楽しんでいたことに興味を示さなくなる

  • 食欲不振や過食、睡眠の問題がある

  • 理由もなくイライラしたり、落ち込んだりすることが増える

  • 頭痛や腹痛など、身体の不調を訴える

といった変化が見られたら、もしかしたらお子さんの心と体がSOSを出しているサインかもしれません。「頑張りすぎている状態」が長く続くことで、心身のバランスが崩れてしまうことがあるんです。


医学的見地から見る「燃え尽き」と自律神経・呼吸の深い関係

では、なぜ「頑張りすぎ」が燃え尽き症候群につながってしまうのでしょうか?そこには、私たちの体の状態をコントロールしている自律神経が深く関わっています。

過度なストレスやプレッシャーが続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなります。特に、体を緊張させ、活動的にする交感神経が優位になりすぎる状態が続くと、心身が常に興奮状態となり、十分に休息をとることができなくなります。この状態が長く続くと、心身ともにエネルギーを使い果たしてしまい、やがて燃え尽きてしまうのです。

そして、この自律神経と密接に関わっているのが「呼吸」です。緊張している時、私たちの呼吸は浅く速くなりがちです。これは、交感神経が優位になっているサインでもあります。浅い呼吸では、十分に酸素を取り込むことができず、心身の疲労回復が滞ってしまいます。

逆に、深くゆっくりとした呼吸は、体をリラックスさせ、休息や回復を促す副交感神経を優位にする働きがあります。


お子さんの「頑張り」を支えるために、呼吸について考えてみませんか?

お子さんが「燃え尽き症候群」にならないためには、頑張りすぎているサインに気づき、心身のバランスを整えるサポートをしてあげることが大切です。

日々の生活の中で、お子さんの様子をいつもより少しだけ注意深く見てみてください。そして、もし気になるサインがあったら、「ちゃんと息が吐けているか」、お子さんと一緒に確認してみてはいかがでしょうか?

「深く息を吸って、ゆっくり吐く」

このシンプルな動作が、意外とできていないことがあります。意識的に息を長く吐き出すことで、自律神経のバランスが少しずつ整い、心と体に休息を取り戻すきっかけになるかもしれません。

お子さんの健やかな成長のために、ぜひ「呼吸」の力に注目してみてください。

体が柔らかい=怪我をしない」ってホント?あなたの常識、アップデートしませんか

「体が柔らかいほど怪我をしにくい!」そう信じて、毎日せっせとストレッチに励んでいるあなた!

実は、その常識、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?

最新の知見をもとに「柔軟性」の本当の姿をお伝えします!

 

そもそも「柔軟性」って何だろう?2つのタイプを知ろう!

 

「柔軟性」って一言で言っても、実は奥が深いんです。スポーツ科学において、柔軟性は「体の関節の可動範囲内で身体運動を円滑に、しかも広範囲に動かすことのできる性能」と定義されています。私たちの体力には欠かせない要素なんですよ。

柔軟性には大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 静的柔軟性 (Static Flexibility): これは、動きを伴わずに、反動をつけずにゆっくりと関節や筋肉を伸ばし、その姿勢を数秒から数十秒間維持する方法で得られる柔軟性です。一般的に「体が柔らかい」と表現される際にイメージされるのは、この静的柔軟性であることが多く、長座体前屈や前後開脚などがその代表的な例です。
  • 動的柔軟性 (Dynamic Flexibility): 一方、動的柔軟性は、動きの中での体のしなやかさや動かしやすさを指します。これは、単に関節の可動域が広いだけでなく、その可動域の中で体をコントロールする能力、筋肉の強さ、そして動作のコーディネーション(協調性)が複合的に関与します。例えば、ウォーミングアップで行われるダイナミックストレッチは、コントロールされた動きの中で徐々に筋肉を伸ばしていく方法であり、競技パフォーマンスの向上に不可欠とされています。

この2つの違いを知っておくことが、怪我と柔軟性の関係を理解する上でとっても重要なんです!スポーツ選手にとって、静的柔軟性と動的柔軟性の両方が求められますが、特に競技中のパフォーマンスを向上させるためには、動的柔軟性の向上が欠かせません。

 

「柔らかければ安心」は間違い!?見過ごされがちな「落とし穴」

 

「体が柔らかいほど怪我をしにくい」という認識は、必ずしも真実ではないかもしれません。もしそうなら、極めて高い柔軟性を誇る体操選手やクラシックバレエのダンサーたちは、怪我とは無縁のはずですよね?しかし、彼らの競技人生もまた、怪我のリスクと隣り合わせであることは、スポーツ医学の現場ではよく知られています。

ここでキーワードになるのが「関節弛緩性(Joint Laxity)」という概念です。これは、関節を構成する靭帯などが生まれつき緩い、あるいは怪我などが原因で緩んでしまい、関節が本来の可動域を超えて過剰に動いてしまう状態を指します。関節弛緩性が過剰な動きにつながり、結果として怪我のリスクを高めることがあります。

メタ分析による研究報告では、過剰な柔軟性を持つ人は、そうでない人に比べて膝や肩の怪我が多いことが示されています。特に、膝の靭帯(前十字靭帯)損傷のリスクが高く、さらに損傷後の靭帯の回復が遅い傾向にあることも複数の研究で明らかになっています。これは、靭帯が緩いことで関節の安定性が低下し、急激な方向転換や着地などの際に、関節が過度にねじれたり、許容範囲を超えて動いてしまったりするためと考えられています。

「もっと柔らかくしなきゃ!」と闇雲にストレッチを頑張ることが、かえって逆効果になる可能性も考慮すべきでしょう。

 

筋肉の「バネ」の力も大切!関節を動かす「チームワーク」

 

私たちの体がスムーズに、そして力強く動くためには、筋肉、腱、関節が複雑に連携して機能しています。

  • **筋肉(骨格筋)**は、柔らかい筋線維で構成され、大きな力を生み出す「エンジン」のような役割を担います。
  • **腱(けん)**は、筋肉の両端に位置し、コラーゲンが束になった構造をしています。この腱は、まるで「バネ」のように力を加えると伸び、力がなくなると元に戻る「弾性」という特性を持っています。
  • 関節は、骨と骨をつなぐ部分であり、関節を構成する靭帯もまた、バネのような柔らかさを持ち、関節の可動性に関与しています。

例えば、立ち幅跳びで一度体を沈み込ませてから跳躍する「反動動作」では、筋肉だけでなく、腱や靭帯も伸ばされ、その際に「弾性エネルギー」として力が蓄えられます。この蓄えられた弾性エネルギーが、力を抜いた瞬間に解放されることで、よりパワフルで効率的な運動が可能になります。ランニングやジョギングも、この弾性エネルギーの蓄積と解放の連続によって成り立っています。

もし腱や靭帯が「柔らかすぎ」て、このバネとしての機能が十分に発揮できない場合、弾性エネルギーを効率的に蓄えたり解放したりすることが難しくなります。その結果、筋肉がより多くの力を自ら生み出さなければならなくなり、運動効率が低下したり、過度な筋疲労や、場合によっては代償動作による怪我のリスクを高めたりする可能性も考えられます。つまり、ある程度の「硬さ」や「張力」は、身体が効率的に機能し、怪我から身を守るために必要不可欠な要素であると言えるでしょう。

 

あなたにとっての「最適な柔軟性」を探る旅へ!

 

柔軟性は、個人の様々な要因によって異なります。主な因子としては、年齢、性差、そして筋肉質などの体格が挙げられます。

  • 年齢: 子どもは一般的に成人よりも柔軟性が高い傾向にありますが、これは関節の構造が未熟で「脆弱性」を伴う場合もあります。一方、加齢とともに柔軟性は徐々に低下し、これが転倒リスクの増加に繋がることが知られています。
  • 性差: 一般的に、女性は男性よりも柔軟性が高い傾向にあります。
  • 筋量: 研究によると、足関節の可動性と、その可動域で発揮できる力(可動力)の両方に筋量依存性があることが示されています。これは、柔軟性と筋力の関係が単純ではなく、複雑な相互作用があることを示唆しています。

競技によって求められる柔軟性の種類や程度も大きく異なります。体操やクラシックバレエといった競技では、非常に高い柔軟性がパフォーマンスに不可欠であり、有利に働きます。しかし、だからといって彼らが怪我と無縁であるわけではありません。一方、サッカーにおいては、関節が柔らかすぎると怪我のリスクが高まる可能性を示す研究がある一方で、関係性が見られなかったとする研究もあり、その関係性は複雑です。野球のような競技では、過度な柔軟性が怪我のリスクを高める可能性が指摘されており、柔軟性を確保しつつも、関節や腱に「適度な硬さ」が必要であると考えられています。

怪我を予防し、安全に運動を続けるためには、柔軟性だけに注目するのではなく、全身のバランス、筋力、正しい身体の使い方、そして適切な疲労管理など、多角的な視点からアプローチすることが不可欠です。

怪我のアイシング、本当に必要?最新の医学的知見から考える

はじめに:昔は常識だった「アイシング」

スポーツや日常生活で怪我をしたとき、「とりあえず冷やしておこう」と思ったことはありませんか?捻挫や肉離れなどの急性期の怪我には、昔から「RICE(ライス)プロトコル」という応急処置が推奨されてきました。RICEとは、安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の頭文字をとったもので、特に「冷やす(アイシング)」は、痛みや腫れを抑えるために欠かせないものとされてきました。

しかし、近年、この「アイシング」に対する考え方が大きく変わってきています。実は、RICEプロトコルを提唱した医師自身も、2014年頃には「アイシングや完全な安静は、かえって治りを遅らせる可能性がある」と見解を改めています。

今回は、最新の医学的知見に基づき、怪我のアイシングが本当に必要なのか、そのメリットとデメリット、そしてこれからの怪我のケアについて、分かりやすく解説していきます。

アイシングの「良いところ」と「気をつけたいところ」

痛みを和らげる効果は確か!

アイシングの最大のメリットは、やはり「痛みを和らげる」効果です。冷やすことで、痛みの信号が脳に伝わりにくくなり、一時的に痛みが軽減されます。怪我をした直後のつらい痛みを和らげるのに役立つため、この点では今も有効な方法だと考えられています。

腫れや内出血を抑える?

アイシングは、血管を縮めて怪我をした場所への血流を減らすことで、腫れや内出血を抑える効果も期待されてきました。特に、内出血がひどい場合(例えば、強くぶつけて青あざになったような場合)には、今でもアイシングが推奨されることがあります。これは、出血を最小限に抑え、余計な腫れを防ぐためです。

でも、治りを遅らせる可能性も?

ここが、アイシングに対する考え方が変わってきた一番のポイントです。私たちの体には、怪我を治すための素晴らしい仕組みが備わっています。怪我をすると、まず「炎症」という反応が起こります。炎症と聞くと、腫れたり熱を持ったりして「悪いもの」と思いがちですが、実はこの炎症こそが、体を治すための最初のステップなのです。

炎症が起こると、体は壊れた組織や不要なものを片付ける「お掃除部隊」(マクロファージなどの免疫細胞)を怪我の場所に送り込みます。そして、このお掃除部隊が、新しい組織を作るための材料を運び、治癒をスタートさせる合図を出します。

アイシングで冷やしすぎると、この「お掃除部隊」が怪我の場所にたどり着くのを邪魔したり、活動を抑えたりしてしまう可能性があります。その結果、本来スムーズに進むはずの治癒プロセスが遅れてしまうのではないか、ということが多くの研究で指摘されています。

怪我のケア、常識が変わった!RICEからPEACE & LOVEへ

アイシングに対する見方が変わってきたことで、怪我のケアの考え方も大きく進化しています。

RICEからPOLICEへ(安静しすぎはNG!)

これまでのRICEプロトコルでは「安静(Rest)」が強調されていましたが、最近では「安静しすぎると、かえって筋力が落ちたり、治りが遅れたりする」ということが分かってきました。そこで、RICEに代わって提唱されたのが「POLICE(ポリス)プロトコル」です。

POLICEは、Protection(保護)、Optimal Loading(最適な負荷)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったもの。ここで注目すべきは「最適な負荷(Optimal Loading)」です。これは、痛みのない範囲で、少しずつ体を動かしたり、負荷をかけたりすることで、組織の回復を促し、強くしていくという考え方です。

そして最新の「PEACE & LOVE」へ

さらに進化したのが、2019年に提唱された「PEACE & LOVE(ピース・アンド・ラブ)プロトコル」です。これは、怪我の直後(最初の3日間)は「PEACE」、それ以降の回復期には「LOVE」という、より長期的な視点を取り入れたケアの考え方です。

  • PEACE(急性期:最初の72時間)
    • Protection(保護):無理な動きから患部を守る
    • Elevation(挙上):患部を心臓より高く上げて腫れを抑える
    • Avoid Anti-Inflammatories(抗炎症剤の回避):炎症を抑えすぎない(アイシングも含む)
    • Compression(圧迫):適度な圧迫で腫れを抑える
    • Education(教育):自分の体の治癒力を信じ、正しい知識を得る
  • LOVE(亜急性期:4日目以降)
    • Load(負荷):痛みのない範囲で、少しずつ運動や負荷をかける
    • Optimism(楽観):前向きな気持ちで回復に取り組む
    • Vascularisation(血流促進):軽い有酸素運動などで血流を良くする
    • Exercise(運動):積極的にリハビリ運動を行う

PEACE & LOVEプロトコルでは、急性期に「抗炎症剤の回避」が入っているのが大きな特徴です。これは、炎症が治癒に不可欠なため、痛み止めやアイシングで炎症を過度に抑えすぎないように、というメッセージが込められています。

まとめ:アイシングは「痛み止め」として、慎重に使う

怪我のアイシングは、もはや「絶対に必要なもの」ではありません。痛みを和らげる効果は確かにありますが、長期的な治癒を考えると、炎症を過度に抑えすぎないことが大切です。

  • 怪我の直後で痛みがひどい場合や、内出血がひどい場合:短時間(10~20分程度)のアイシングは、痛みを和らげるために有効です。ただし、直接氷を当てず、タオルなどで保護しましょう。
  • それ以外のほとんどの場合:痛みがないのに漫然と冷やし続けるのは、治りを遅らせる可能性があります。
  • 最も大切なこと:痛みのない範囲で、できるだけ早く体を動かし始めること(最適な負荷)。そして、自分の体が持つ治癒力を信じ、前向きな気持ちで回復に取り組むことです。

怪我のケアは、常に進化しています。もし怪我をしてしまったら、最新の知識を持つ医療の専門家に相談し、自分に合った最適なケアを受けるようにしましょう。