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ジュニア選手に最も足りないのは「技術」ではなく「絶対的な出力(エンジン)」である

「バットの軌道はこうで…」「走るときの足の接地位置はここが効率的で…」

今、ジュニアスポーツの現場では、YouTubeやSNSの影響もあり、小学生や中学生のうちから「効率の良いフォーム」や「最新の技術理論」をコスパ良く学ぼうとする子ども(そして保護者)が急増しています。

しかし、現場のリアルな問題として、こんな光景が当たり前になってはいないでしょうか。

  • 50mを8秒台で走るフィジカル(出力)しかないのに、最先端の「スプリントフォーム」ばかりを追求している。
  • そもそもバットを素早く振る筋力(ヘッドスピード)がないのに、流行りの「バレルスイング」の形だけを真似ようとしている。

最近よく耳にします。

練習は量より質

動かす「エンジン」が軽自動車なのに、F1の「ハンドル操作(技術)」だけを学んでも、スピードは絶対に速くなりません。

今のジュニア選手に必要なのは、小手先の「技術(フォーム)」ではなく、まずは身体を爆発的に動かすための「絶対的な体力・出力(量)」では?


■ なぜ、私たちは「エンジン(体力)」を軽視し、「技術(フォーム)」ばかり求めてしまうのか?

これには、日本で長年信じられてきた**「12歳までに運動神経が決まる(スキャモン曲線とゴールデンエイジ理論)」**の大きな誤解が関係しています。

従来の指導現場では、「子どもの頃は神経系が発達する時期だから、技術(フォーム)の練習だけをすべき。

筋力(体力)トレーニングは、思春期以降でなければ意味がないし、危険だ」と教えられてきました。

実はこれが、「体力が伴わない技術偏重の子ども(ガワだけのスモールアスリート)」を量産してしまった諸悪の根拠です。

最新のデータは、「子どもであっても、神経系の適応(脳から筋肉への命令の通り道を増やすこと)によって

基礎筋力や爆発的なパワーといった『身体の出力(量)』は安全に、かつ劇的に向上させられる」と証明しています。

技術(質)は、十分な出力(量)という「太い土台」があって初めて、その上で機能するもの。順番が完全に逆なのです。


■ 幼少期にエンジンを育てず、狭い「守(型)」をハメることの5つの致命的弊害

出力(エンジン)がない子どもに、無理やり「効率の良いフォーム(守)」をハメ込もうとすると、以下のような深刻な弊害が身体と脳を襲います。

1. 脳の伸びしろを奪う「過剰なシナプス剪定」

幼少期(3〜8歳頃)は、脳の神経回路が急激に作られ、同時に不要な配線を整理する「剪定(カット)」が行われます。この時期に、特定の競技の「型」だけを過度に反復させると、その回路だけが極端に強化される一方、他の多様な動き(投げる、這う、ぶら下がる、バランスを取るなど)を司るはずだった神経回路が「不要」と判断され、脳から永久に消去されてしまいます。

2. パフォーマンスが伸び悩む「レベル6の天井」

出力(パワーやスピード)がない子が、流行りのフォーム(守)を真似しようとすると、関節や筋肉をガチガチに硬化させて「形だけを合わせる動き」になります。 これは一時的にはお行儀よく綺麗に見えますが、室町時代の世阿弥が『風姿花伝』で説いた**「時分の花(一時的な偽物の魅力)」に過ぎません。身体が大きく成長する思春期の壁を迎えた瞬間に、その偽物の動きは破綻し、高校生以降に全く伸び悩む「レベル6の天井」**にぶち当たります。

3. 怪我(オーバーユース障害)のリスクが「2.25倍」に

骨や関節が未熟なうちに、エンジンが足りないまま「特定のフォーム」を不自然に繰り返すと、未熟な骨の成長線に局所的なストレスが集中します。実際、早期に1つの競技に特化してフォームばかり練習する子どもは、多様な運動をしている子どもに比べて、重篤な使いすぎ(オーバーユース)障害を負うリスクが2.25倍に跳ね上がります。

4. 13歳までに70%が辞めてしまう「バーンアウト(燃え尽き)」

「型」の反復や、効率ばかりを求める大人からのプレッシャーは、子どもから「心の赴くままに身体を動かす楽しさ」を奪います。その結果、若年アスリートの約70%が13歳までにそのスポーツを完全に辞めてしまうという深刻なドロップアウト問題が起きています。

5. 「破・離」をしようにも、削ぎ落とす「原石(体力)」が枯渇する

運動学習理論(ベルンシュタイン理論)において、真の上達(破・離)とは、「無駄な力みをなくし、重力や相手の力を味方につけて、しなやかに動く(余計なものを削ぎ落とす)」プロセスです。 しかし、この「不要なものを削ぎ落とす」ためには、前提として**「削ぎ落とすための巨大な原石(豊かな運動経験の引き出しと、絶対的な体力)」**が体内に必要です。最初から「砂利」のように小さな体力・出力しか持たない子は、どんなに磨こうとしても、そこから偉大な彫刻(一流のパフォーマンス)を削り出すことはできないのです。


まずは「太い大木」を育てよ。技術という枝葉はそのあとでいい

50mを8秒で走る子に必要なのは、腕の振り方や足の角度の微調整ではありません。

早く走るための身体操作「絶対的な出力(エンジン)」です。

バットを振る筋力がない子に必要なのは、バレルスイングの軌道をなぞることではありません。

全力でバットを振りちぎるための「絶対的なパワー(量)」です。

技術という洗練された枝葉(ハンドル操作)は、強靭な幹(エンジン)があって初めて暴風に耐え、花を咲かせます。

日本のジュニア育成は、そろそろ「コスパ重視のフォームハメ」から脱却し、子どもたちの未来の伸びしろを信じて、「とことん出力を出し切る、骨太なエンジン(体力)づくり」へと立ち返るべきではないでしょうか。


 

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